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笹幸恵
2018.5.23 16:28

他国の首脳会談で日本の命運が決まる?

『新潮45』は最近ほんとに『WiLL』『Hanada』と

区別がつかなくなってしまった。

トップに掲載された特別企画が

「『反安倍』ヒステリー列島解剖」で、

特集は「朝日の論調ばかりが正義じゃない」で、

すっかり親安倍&反朝日になっている。

売れるんだろうな。

 

で、とりあえず特別企画のトップ記事、

堤堯氏の「いまこそ安倍政権を支持する理由」を

読んでみた。

 

 

冒頭、安倍叩きはもはや「集団ヒステリー」と述べた上で、

自身が考える、「いまなぜ安倍は必要か」論を展開。

 

その一つは、日銀総裁の首をすげ替え、

通貨発行権という「主権」を行使して、

円をドンドン刷り増したこと。

これは、以前はアメリカの機嫌が悪くなるとして

躊躇していた政策だという。

要するに安倍首相は立派に国の主権を行使した、というわけだ。

 

「この一事だけでも筆者は安倍を支持する」

 

で、民主党政権時の経済をボロクソに言って、

アベノミクスを評価。

そしてもう一度同じことを繰り返している。

 

「この一事だけでも筆者は安倍を支持する」

 

誤植かと思った。

 

また、アベノミクスの成果について、

数字を挙げて、「大卒も高卒も就職には困らない」と

いうけれど、生活者の実感としては首を傾げざるを得ない。

社員を使い捨てにするようなブラック企業が増え、

働かなければ食べていけないのに子供を預けられない、

将来不安で結婚もできないという若い世代の姿を

どう考えるのだろうか。

いまが好景気だって私は微塵も感じないけどな。

 

で、次は安全保障だ。

海上保安庁や自衛隊OBから聞いた話として、

いわゆる「グレーゾーン事態」で

日本は何もできないことを紹介している。

これを「現行憲法の縛り」としていて、

その通りではあるのだけど、ここから先がズッコケる。

 

「ことほど左様に、憲法改正は現場からの声だ。

安倍が『九条に自衛隊の存在を明記する』としたとき、

統合幕僚長・河野克俊は『まことに有り難い』と述べた。

隊員の総意を代表したものといえる」

 

随分ざっくりまとめたなあという印象。

統幕長が礼を言ったから、それが隊員の総意であり、

それゆえに安倍加憲案を支持するかのような文意に

なっているのだけど、重要な論点が抜け落ちている。

 

安倍首相は、九条に自衛隊を明記したとしても、

その権限は変わらないって言っているんですよ?

つまり「現行憲法の縛り」はそのままなんですよ?

自衛隊というワードを憲法に盛り込めば、

すべてが解決するかのような幻想を

堤氏は抱いているのではなかろうか。

 

さらに、この憲法改正を推進する安倍こそ

「真の革新的政治家」という。

この指摘はごもっともと思う。

安倍首相は決して保守ではない。

そして数々の改革と、地球儀外交を持ち上げているのだけど、

最後で目が点に。

 

米朝首脳会談で米国が北朝鮮に妥協しないよう、

「トランプの尻を叩いているのが安倍首相だ」

 

そしてこう続ける。

 

「米朝会談次第で日本の命運が決まる。

この大事なときに『安倍退陣』を叫ぶ輩は

阿呆というしかない」

 

いやいやいや、他国の首脳会談で日本の命運が

決まること自体、おかしな話ではないか。

トランプの尻を叩くことしかできない

一国の首相がどこにいる?

冒頭の「主権」云々はどこへやら、

もはや我が国が主権国家ではないことを
自ら暴露しているに等しい。

 

トランプの尻を叩いているかどうかも怪しいけどね。

一緒にゴルフして、最大級のおもてなしをするのが

「尻を叩く」という意味だとはとても思えない。

 

特別企画、全部読もうと思ったけど、

1本目の記事で力尽きました・・・。

 

 

笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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